「最近トイレが近くなった」「尿の勢いが弱くなった」「夜中に何度も目が覚める」。こうした変化を、年齢のせいだとあきらめていませんか。男性の尿のトラブルの多くには、前立腺という臓器が関係しています。
前立腺の病気には、治療で生活の質が大きく改善するものや、早期に見つけることが重要ながんもあります。このコラムでは、泌尿器科で診療する主な前立腺の病気について、症状・原因・検査・治療を順にご説明します。
1. 前立腺とは?男性だけにある臓器の役割
前立腺は、膀胱のすぐ下にある男性特有の臓器で、大きさはクルミほどです。尿道を取り囲むように位置しているのが特徴で、精液の一部となる前立腺液をつくる働きをしています。
尿道を取り囲んでいるため、前立腺が大きくなったり炎症を起こしたりすると、尿の通り道が圧迫され、排尿に関するさまざまな症状が出やすくなります。前立腺の病気で「尿」の悩みが起こりやすいのはこのためです。
前立腺は男性ホルモンの影響を受けており、加齢とともに変化していきます。中高年の男性にとって、前立腺の健康は身近な問題といえます。
2. 前立腺の主な病気
泌尿器科で診療する前立腺の代表的な病気は、次の3つです。
2-1. 前立腺肥大症
前立腺の内側の部分(移行域)が年齢とともに大きくなり、尿道を圧迫して排尿に支障が出る病気です。前立腺の小さな結節は30代後半からでき始め、40代で約4割、50代で約5割、60代で約6割、70代で約7割の男性に見られるといわれています。大きくなっても症状が出ない方もいますが、症状がある場合は治療の対象になります。
主な症状は次の3種類に分けられます。
- 排出症状:尿の勢いが弱い、出始めるまで時間がかかる、お腹に力を入れないと出ない、途中で途切れる
- 蓄尿症状:トイレが近い(頻尿)、夜間に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)、急に強い尿意が起こり我慢しにくい
- 排尿後症状:出し切った感じがしない(残尿感)、排尿後に少し漏れる
注意したいのが尿閉(尿がまったく出なくなる状態)です。前立腺肥大症のある方は、大量の飲酒や、市販の風邪薬・鼻炎薬(抗ヒスタミン作用や抗コリン作用をもつ成分を含むもの)の服用をきっかけに、急に尿が出なくなることがあります。救急で管を入れて尿を出し、そこで初めて前立腺肥大症がわかるケースも少なくありません。下腹部が張って痛むのに尿が出ない場合は、早めに医療機関を受診してください。
2-2. 前立腺がん
前立腺がんは、日本人男性で罹患数が最も多いがんです。国立がん研究センターの統計では、2023年に新たに診断された方は約10万2千人にのぼります。高齢になるほど増えるがんで、50歳以上から注意が必要になります。
前立腺がんは、早期にはほとんど自覚症状がないのが特徴です。排尿の症状が出てくるのは、がんが進行して尿道や膀胱を圧迫するようになってからのことが多く、骨に転移して腰や背中の痛みで見つかることもあります。一方で、進行がゆっくりなタイプも多く、早期に見つかれば治療の選択肢が広がり、5年相対生存率も90%を超える高い水準にあります。
そのため、症状が出る前にPSA検査で調べることが早期発見の鍵となります。
2-3. 慢性前立腺炎
会陰部(陰嚢と肛門の間)や下腹部、恥骨のあたりの痛み・不快感、排尿時の違和感、頻尿、残尿感などが長く続く病気です。「慢性骨盤痛症候群」とも呼ばれます。20〜40代の働き盛りの男性にも多く見られます。
細菌が原因となるものは少なく、多くは細菌が見つからないタイプです。デスクワークや車の運転など長時間座り続ける生活で前立腺周囲の血流が滞り、炎症が長引くことが関係すると考えられています。飲酒や刺激物で悪化しやすい傾向もあります。命に関わる病気ではありませんが、症状が仕事や生活に支障をきたすことも多いため、我慢せずにご相談ください。
3. こんな症状があれば泌尿器科へ|受診の目安
次のような症状に当てはまるものがあれば、前立腺の病気が隠れている可能性があります。
- 尿の勢いが弱くなった、尿線が細くなった
- 尿が出始めるまでに時間がかかる
- 排尿後もすっきりせず、残尿感がある
- 日中のトイレが近い(目安として8回以上)
- 夜間、トイレのために2回以上起きる
- 急に尿意が起こり、トイレまで我慢するのがつらい
- 会陰部や下腹部に痛み・違和感が続いている
- 尿に血が混じる(血尿)、精液に血が混じる
- 健康診断や人間ドックでPSAの値が高いと指摘された
特に血尿は、前立腺の病気のほか、膀胱がんや尿路結石などが原因のこともあるため、一度だけで止まった場合でも受診をおすすめします。また、症状がなくても、50歳を過ぎたら一度はPSA検査を受けておくと安心です。
4. 泌尿器科で行う前立腺の検査
前立腺の検査は、多くが体への負担の少ないものです。症状や状態に合わせて、必要な検査を組み合わせて診断します。
- 問診・症状スコア:排尿の状態について質問票に答えていただき、症状の程度や生活への影響を確認します。
- 尿検査:血尿や感染(炎症)の有無を調べます。
- 超音波(エコー)検査:お腹の上から機器を当て、前立腺の大きさや形、膀胱の状態を調べます。痛みはありません。
- 尿流測定:専用のトイレで普段どおり排尿していただき、尿の勢いや排尿にかかる時間を測定します。
- 残尿測定:排尿後、膀胱に尿がどれくらい残っているかを超音波で測ります。
- PSA検査(血液検査):前立腺がんの早期発見に有用な検査です(詳しくは下記)。
4-1. PSA検査とは
PSA(前立腺特異抗原)は前立腺から分泌されるたんぱく質で、血液検査で測定できます。前立腺がんがあると血液中の値が上がりやすいため、がんのスクリーニング(ふるい分け)に用いられています。
一般的には4.0ng/mL以上が精密検査の目安とされ、年齢に応じて50〜64歳は3.0、65〜69歳は3.5、70歳以上は4.0を基準とする考え方もあります。ただし、PSAは前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇することがあるため、値が高い=がんというわけではありません。反対に、前立腺肥大症の治療薬の一部(5α還元酵素阻害薬)を服用していると、PSAの値が実際より低く出るため、結果の判断には泌尿器科医の評価が欠かせません。
検診開始の目安は50歳からで、ご家族(父親や兄弟)に前立腺がんの方がいる場合は40歳から受けることがすすめられています。
4-2. PSAが高かった場合の精密検査
PSAの値が高かった場合は、MRI検査で前立腺にがんを疑う部分がないかを確認し、必要に応じて前立腺生検(前立腺の組織を細い針で採取して調べる検査)を行い、確定診断をします。がんと診断された場合には、CTや骨シンチグラフィーで広がりや転移の有無を調べ、治療方針を決めていきます。
5. 前立腺の病気の治療法
5-1. 前立腺肥大症の治療
多くの方は、薬物療法で症状の改善が期待できます。主に次のような薬を、症状や前立腺の大きさに合わせて使い分けます。
- α1遮断薬:前立腺や膀胱の出口の筋肉の緊張をゆるめ、尿を出しやすくします。
- PDE5阻害薬:前立腺や膀胱の血流を改善し、排尿症状をやわらげます。
- 5α還元酵素阻害薬:男性ホルモンの働きを抑え、大きくなった前立腺を小さくします。
- 漢方薬・その他:症状や体質に応じて併用することがあります。
薬で十分な効果が得られない場合や、尿閉を繰り返す場合、腎臓の機能に影響が出ている場合などは、手術を検討します。尿道から内視鏡を入れて肥大した部分を切除する手術(TURP)や、レーザーを用いた手術などがあります。
日常生活では、寝る前の水分やアルコール・カフェインのとりすぎを控える、長時間の座りっぱなしを避ける、便秘を防ぐといった工夫も症状の悪化予防に役立ちます。
5-2. 前立腺がんの治療
前立腺がんの治療は、がんの広がり(病期)、がんの性質(悪性度)、年齢や体の状態、ご本人の希望などを総合して決めます。主な選択肢は次のとおりです。
- 監視療法:進行がゆっくりで低リスクのがんでは、すぐに治療せずPSAなどで定期的に経過を観察することがあります。
- 手術療法:前立腺を摘出する手術です。現在はロボット支援手術が広く行われています。
- 放射線療法:体の外から照射する方法や、体内に線源を入れる方法などがあります。
- 内分泌療法(ホルモン療法):前立腺がんが男性ホルモンの影響で増えることを利用し、注射や内服薬でホルモンの働きを抑える治療です。
5-3. 慢性前立腺炎の治療
まずは生活習慣の見直しが大切です。30分に1回は立ち上がって体を動かす、長時間の運転では休憩をとる、飲酒や刺激物を控えるといった工夫で症状がやわらぐことがあります。あわせて、植物由来成分の薬(セルニルトン)や漢方薬などの薬物療法を組み合わせて治療します。
6. 石井クリニックの前立腺診療
北浦和の石井クリニックでは、前立腺の病気をはじめとする泌尿器科の診療を行っています。
6-1. 専門医による診療
院長は日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療認定医の資格を持ち、大学病院や地域の基幹病院で泌尿器科診療に長く携わってきました。前立腺肥大症・前立腺がん・慢性前立腺炎のいずれについても、診断から治療、経過観察まで一貫して対応しています。
6-2. 院内で行える検査・治療
- 超音波検査、尿流測定、残尿測定、尿検査、PSA検査
- 前立腺生検(日帰り・午後の検査時間に実施)
- 前立腺肥大症・慢性前立腺炎の薬物療法(漢方薬を含む)
- 前立腺がんの内分泌療法(注射・内服)と、PSAによる定期的な経過観察
MRIやCT、骨シンチグラフィーなどの精密検査、手術や放射線治療が必要な場合は、患者さんの状態に合った医療機関へご紹介し、連携して診療を進めます。
6-3. さいたま市の前立腺がん検診について
さいたま市では、50〜80歳の男性を対象に、PSA検査による前立腺がん検診を実施しています(2026年度は自己負担600円、前年度に受診していない方が対象)。対象となる生年月日や受診方法など最新の情報は、さいたま市のホームページでご確認ください。検診で「要精密検査」となった方の精密検査も当院でご相談いただけます。
6-4. 受診のご案内
石井クリニック(泌尿器科)
- 所在地:埼玉県さいたま市浦和区北浦和4-3-8 テックビル4階(JR北浦和駅 西口徒歩1分)
- 電話:048-833-0010
- 診療時間:月・火・水・金 9:00〜12:30/15:00〜18:00、土 9:00〜12:30(13:00〜15:00は検査・治療の時間)
- 休診日:木曜・土曜午後・日曜・祝日
- 紹介状がなくても受診できます。一般初診外来はWEB予約にも対応しています。
7. よくある質問
- 前立腺の検査は痛いですか?
- 尿検査、超音波検査、尿流測定、残尿測定、PSA検査(採血)は、いずれも痛みがほとんどない検査です。初診時はまずこうした負担の少ない検査から行います。
- 前立腺肥大症は前立腺がんになりますか?
- 前立腺肥大症ががんに変化するわけではありません。ただし、両方が同時に起こることはあり、症状だけでは区別できないため、排尿症状がある方もPSA検査を受けておくことをおすすめします。
- 受診するときに準備しておくことはありますか?
- 尿検査を行うため、来院直前の排尿はできるだけ控えてお越しください。服用中のお薬がわかるもの(お薬手帳など)や、健康診断でPSAを指摘された方はその結果もお持ちください。
- 夜中のトイレの回数が増えたのは年齢のせいでしょうか?
- 年齢とともに増える傾向はありますが、前立腺肥大症や過活動膀胱など、治療で改善できる原因が隠れていることも多くあります。睡眠不足や夜間の転倒にもつながるため、気になる方はご相談ください。
8. まとめ
前立腺は、年齢とともに多くの男性に変化が現れる臓器です。前立腺肥大症は薬物療法で症状の改善が期待でき、前立腺がんはPSA検査で早期に見つけることができます。慢性前立腺炎も生活の工夫と治療で症状をやわらげることが可能です。
「尿の悩みは恥ずかしい」「年齢のせいだから仕方ない」と我慢せず、気になる症状があれば泌尿器科にご相談ください。石井クリニックでは、紹介状なしで受診いただけます。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺 がん統計」
- 日本泌尿器科学会「男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン」
- 日本泌尿器科学会「前立腺がん検診ガイドライン」
- さいたま市「がん検診・成人の健康診査等について」