2010/03/15
【電気刺激療法の併用で抗コリン薬の効果を十二分に発揮】
OABは、多くはまだ原因不詳の疾患で抗コリン薬だけで効果がない場合がある。実際に経験した幾つかの症例を挙げて解説する。
1例目は、抗コリン薬が効果なく、昼間の頻尿と尿意切迫感が仕事の障害になることを主訴に受診した症例である。この症例は抗コリン薬で口渇の副作用があるため増量せずに抗うつ薬を併用。さらに、薬物療法に加え干渉低周波治療を行うことで、排尿回数の減少を得ることができた。
干渉低周波療法は電気刺激療法のひとつで、中周波電流を体内で交差させることで干渉波(低周波)を発生させ、膀胱収縮筋と骨盤底を刺激するものである(図1)。OAB症状に対して有効性が示された電気刺激療法である。臨床経験から、干渉低周波治療の頻回施行を抗コリン薬治療と併用することで効果も十分に得られることが多い。患者様満足度も高い治療法である。
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【抗コリン薬で効果不十分な症例では間質性膀胱炎を疑う】
2例目は、昼夜とも排尿回数が多い症例である。排尿日誌からはほぼ1時間毎に尿意があり、1回の排尿量が極端に少ない状況がうかがえた。抗コリン薬で症状が改善しないため、間質性膀胱炎も疑いTh2サイトカイン阻害薬を併用したところ、排尿回数の減少と1回排尿量の増加がみられた。
間質性膀胱炎にも特徴的な症状である膀胱痛のない症例があり、
頻尿や尿意切迫感を訴える患者様の中に、間質性膀胱炎の患者様が潜んでいる可能性もある(表1)。
OAB治療薬を処方しても症状の改善が得られなかったときは、
間質性膀胱炎の可能性を考慮することも必要と考えている。
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【夜間頻尿に対しては患者様の年齢も考慮した治療工夫が必要】
3例目は、高齢者の訴えに多い夜間頻尿についてである。まず、日中や就寝前の水分摂取を控えさせることであるが、夜間の多尿に対して薬物治療としてはNSAIDsの有用性も報告されている。NSAIDsは腎での尿生成抑制や下部尿路に対する鎮静作用、尿意に関する中枢での作用などがあり、夜間の尿量を減少させるというものである。2年前から頻尿、尿意切迫感を、1年前より夜間頻尿のため睡眠不足を訴えた症例に対し、就寝前にNSAIDsと抗コリン薬を併用したところ、夜間排尿回数を改善させることができた。
4例目は、夜間頻尿による寝不足を訴えた男性高齢者である。前立腺肥大症に合併する夜間頻尿と診断し、α1ブロッカーと睡眠導入剤を選択した。また、この患者様はBNPが高値であったため、うっ血性心不全も考慮し利尿剤も投与した。投与のタイミングは、午後2時で尿を夕方多く出すことで、夜間を少なくできた。また、就寝前のα1ブロッカーは夜間の排尿量を減少させるとされている。
α1ブロッカー投与で前立腺肥大症に対する効果だけではなく、夜間の血圧を下げ、尿量を少なくすることができた。
このように、排尿日誌から排尿状態を読み取り、さらに検査値や年齢、既往などからOAB症状の原因を探ることが重要となる。そうして個々の患者様にあったオーダーメード治療の工夫をすることで、良い結果を得られるものと考える。